ビラーンの医療と自立を支える会(HANDS)


保健ボランティア育成によるモロの村の医療改善事業
今井記念海外協力基金助成

ヘルスポストを保健ボランティアに託して
  - 2006年度モロの村の地域医療推進事業完了 -
 2006年4月、男児対象Tuli(割礼)から始まった「保健ボランティア育成によるモロの村の医療
改善事業」は、2007年3月末にすべてのスケジュールを終了しました。

 PIHS責任者ナプサさんからの2-3月活動報告には、一連の保健ボランティア育成事業の集
大成ともいえる常備薬センター(Health Post)について、配備したハーブ薬のほか医薬・医療
備品管理全般を、村の保健ボランティアチームに託す手続きが終了したとありました。今回セ
ンターが設置されたのはシギル、ティナガカン、キアンバ3村です。

 同時に「妊娠・出産に関する勉強会」の写真も届きました。2月開催のシギル村緑陰セミナー
で、PIHSスタッフのハリマさんが、太い幹に貼った図を使い、女性の体の仕組みを説明してい
るシーンです。父親も何人か参加したそうです。

 前回の報告のように、2006年度の事業では、ハーブ薬製造で大きな成果を挙げました。これ
を量的・地域的に拡大して、常備薬センターを増設し、またTuliのような局部麻酔、切開、縫合
からなる初級外科処置技術をより多くの保健ボランティアが習得できるよう、本年度も今井記
念海外協力基金をいただいて、PIHSとの協働事業を継続することが決まりました。

 新規に含めたプロジェクトは、写真の緑陰セミナーのような、男性も対象にした家族計画セミ
ナーです。家族計画はイスラム教の教義にも関わることで、医療を超えた分野をも含みます
が、イスラム指導者の協力も得て実施する予定です。


2007年1月報告
 11月の末に山崎さん・相田さんと共にティナガカンTinagacanコミュニティを訪問した。パササ
ンバオ・ヘルス&トレーニングセンターと銘打ち、ヤシで屋根をふいた集会所に大勢の女性が
集まって「ハーブ薬作り」が本日のメーンイベント。

 ラグンディ(Ragndi)の葉を砂糖とともに煮詰めれば喘息に卓効ありとのこと。りっぱな喘息患
者である私は恰好なモデルケースになれそう。皆で楽しくコンロを囲んで、和気あいあいと薬作
りが始まった。摘んできた山盛りの葉っぱを鍋で煮詰めるのだが、加える砂糖の量がはんぱじ
ゃない。2時間近く煮詰めたものを布でろ過して小瓶につめて出来上がり。舐めてみたら、なる
ほどあまーい。砂糖をたくさん加えるのは、ハーブだけだととんでもなく苦いので口当たりを良く
するのと、長期保存のためと思われる。約100mlが30ペソだった。沢山買って我が喘息に試し
てみたかったが、荷物が重くなるので2瓶のみで断念。果
たして効き目は?

 他にタワタワ(Tawa-tawa 赤葉と白葉の2種あり)は粉
末にすればデング熱に効くし、葉から滲み出る白い液体
は眼病に効くという。このハーブ薬の売り上げが僅かなが
らもコミュニティの収益となるので、何種類か揃えておけ
ばちょっとした薬屋さんになるだろう。

 左の写真はボランティアスタッフのノーアンさんが、薬草
の標本を示して、ハーブとその効能について説明している
ところ。日本で言えば漢方薬に当たると思うが、フィリピン
には先祖伝来の薬草が数多くある。ここのコミュニティで
は数種のハーブを育て、ハーブ園も作っていた。
 貧しいフィリピンの人たちには、医者に処方されても薬を買えない人のほうが多い。だから手作りで薬を作って分けあうというこのパササンバオ方式は多くの支持が得られるのだと思う。このようにして学び実践した薬作りが周囲の村々に拡がっていくことが最も大事なのだと、スタッフは語ってくれた。
 薬草を煮詰めている間、おいしい昼ごはんを、子どもたちを含め、集まったひと全員で楽しくごちそうになった。皆が集まって何かをするということがまれになってしまった日本。隣人に何が起こっていても気がつかない、あるいは気がつかないふりをしている日本人のエゴイズム、老人の孤独死などに思いを馳せたひとときであった


2006年10月報告
 このプロジェクトは、各コミュニティーに住んでいる保健ボランティアへの研修が主な目的です
が、そのボランティアたちを取りまとめているのが、PIHSのローカルボランティアさん3名です。
毎月29日はジェネラルサントス市内に集まって、その1ヶ月間にあった出来事の報告と、次の
1ヶ月の活動計画をPIHSスタッフの前で発表します。8月29日のミーティングに同席しました。

 タガテさん(43才)はキアンバから来ました。栄養教室と給食のあと、母親たちとどのようなミ
ーティングを行ったか、出産した人は何名か、薬草園では何を作っているか、など本当にその
地域のことがわかってなければできない詳細な説明をしています。

 カラミンさん(31才)はティナガカンから。世帯数の報告、栄養教室、歯磨き指導教室の話。ト
ゥヤンという新しく支援することになった村で、ファシリテータ−スキルトレーニング(物事を円滑
かつ促進する技術研修)を行った報告がなされました。

PIHSスタッフの前で活動を報告。
質問が次々と飛ぶ。
   トゥヤンの女性たちはこういった研修を受けるのは初めてで、とても楽しんでいたそうです。
 今回はそのトゥヤンからボジコンさんも特別参加して、建設中のトレーニングセンターについてや、村内の肺炎患者について報告しました。
 そのあとは今後のサニテーションキャンペーン(公衆衛生活動)や薬草研修の打ち合わせです。午後2時に始まったミーティングは6時過ぎまで続きました。HANDSのプロジェクトはこういった人々の活動に支えられています。


2006年7月報告














前年度の評価及び本年度の打ち合わ
せ。PIHS代表のナプサさん(向かって
右)とモロ女性センターのアビナさん
PIHS(Pasasambao Integrated Health Service) との協働事業であるイスラム民族の村への地域医療支援は今年4年目を迎えました。

 巡回診療対象(3村各2回)、保健ボランティア研修(4村対象約20人)は従来と同様ですが、本年度は新規にHealth Spot(健康センター)を3村に設置します。過去の事業で、保健ボランティアの能力アップが図られ、患者への対応や医薬品管理ができるティナガカン、シギル、キアンバの3箇所です。

 なお、例年、4−5月は、事業の中で夏休み期間を利用した男児の包茎切開施術が行われます。従来は不衛生な状況で実施されたため、傷口から細菌が入り命を落とすケースもありました。これは、小規模外科手術実習として昨年の保健ボランティア研修に含め、すでにその技能を修得しています。



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